翻訳絵本『ぼくのなまえはサンゴール』日本語版ブックデザイン(表紙・本文デザイン)
翻訳絵本『ぼくのなまえはサンゴール』は、原作『My Name Is Sangoel』の日本語版です。日本での出版にあたり、表紙および本文の日本語版デザインを担当しました。
この絵本は、難民キャンプからアメリカへ移住した家族の物語です。主人公の名前にまつわる出来事を通して、異なる土地で生きる不安や戸惑い、自分の名前を大切にしたいという思いが描かれています。水彩によるやわらかな絵の中に、切実なテーマが込められた作品です。そのため日本語版のデザインでも、作品の繊細な空気を損なわず、読者が自然に物語へ入っていけることを大切にしました。
表紙と本扉のタイトルは、原書の水彩表現に調和するよう、水彩風のニュアンスを意識してデザインしました。原作のタイトルにも手描きらしい表情がありますが、日本語版ではその雰囲気を受け継ぎながら、読みやすさにも配慮して調整しています。字形を必要以上に崩さず、絵と自然になじむやわらかさを目指しました。日本語の文字が加わっても原書の印象が大きく変わらないよう、見え方の重さやリズムにも気を配っています。
本文では、主人公である少年の語り口に合うよう、親しみがありながら落ち着きも感じられる書体を選びました。あわせて、登場人物たちの空気感や、ポップな配色を含んだイラストとも無理なく調和することを重視しています。ページによって本文量に差があるため、文字サイズや行送りは丁寧に検討しました。絵を活かしながら、言葉が無理なく読めるバランスを探っています。
全体としては、原書の魅力をそのまま日本語の読者へ手渡すような感覚でデザインしました。翻訳絵本だからこそ、原書の空気を読み取り、日本語として自然に機能させることが重要になります。この絵本を通して、戦争や迫害によって故郷を追われた人々への理解を少しでも深めていただけるよう意識して制作しました。作品が持つやさしさと切実さの両方を受けとめながら、読者が物語の世界に静かに寄り添える一冊を目指しました。
(※絵本のデザインは、出版社から許可をいただいて掲載しております。)
クライアント:ゆぎ書房 様 文:カレン・リン・ウィリアムズ、カードラ・モハメッド 様
絵:キャサリン・ストック 様 訳:小野寺美奈、當銘美菜、山西優二、前田君江 様
こちらのブログページには、実物の写真も掲載しております。
●日本語版のブックデザインを担当した『ぼくのなまえはサンゴール』(翻訳絵本)が出版されました。