翻訳絵本『本当にやる! できる! 必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』日本語版ブックデザイン(表紙・本文デザイン)
『本当にやる! できる! 必ずやる! アイスランドの「女性の休日」』は、1975年10月24日にアイスランドの女性たち約90%が家庭や職場での仕事を一斉に止めた「女性の休日」(ストライキ)の実話を、明るく力強いトーンで伝える翻訳絵本です。英語版( I dare! I can! I will! )とアイスランド語版( Ég þori! Ég get! Ég vil! )が先に刊行されており、日本での出版にあたり、表紙から本文にいたる日本語版のデザインを担当しました。
制作にあたっては、まず原書で使われている書体や文字の扱いを丁寧に検証するところから始めました。絵本の空気感を損なわずに日本語へ受け渡すため、全体のデザイン方針を立てたうえで本文の組見本を複数案作成し、必要に応じて手描きフォントの試作も行いながら、文章のリズムや読み心地を細やかに調整しています。
表紙では、赤い帯の勢いと群衆の高揚感がまっすぐに伝わるよう、原書と同様にタイトルを大きく、手描き風でやさしさと芯の強さを併せ持つ表情に整えました。このタイトルの文字は、物語の重要な場面でも「声」として立ち上がる役割を担うため、単に目立たせるのではなく、イラストの筆致や色面の力強さと同じ感覚で響くフォントを慎重に選定しています。
本文では、母娘の会話が持つやわらかなトーンを大切にし、読者が自然に感情移入できる書体と文字組みのバランスを探りました。本作にはラジオの音声、新聞記事、電報、横断幕、プラカードなど、イラスト内に多様な文字表現が登場しますが、原書ではそれらがすべて手描き文字として描かれています。英語やアイスランド語のようにシンプルな字形であれば成立する手描き表現も、日本語では漢字を含む小さな文字を手描きすることが物理的に難しい箇所もあるため、フォントを加工して対応する部分と手描きで描き起こす部分を整理し、場面ごとに最適な文字表現を作り分けました。
全体を通して、女性たちの想いと願いが込められた題材であることを踏まえ、一つひとつの文字要素が物語の一部として自然に息づくよう、細部まで配慮してデザインしています。
(※絵本のデザインは、出版社から許可をいただいて掲載しております。)
クライアント:ゆぎ書房 様 作:リンダ・オウラヴスドッティル 様 訳:朱位昌併 様
こちらのブログページには、実物の写真も掲載しております。
・日本語版のブックデザインを担当した『本当にやる! できる! 必ずやる!:アイスランドの「女性の休日」』(翻訳絵本)が出版されました。